登場人物:

- こころ先生:やさしくて頼れるスクールカウンセラーの先生
- けんちゃん:小学4年生。最近ちょっとイライラしがち…
本当にできないの?
Scene:学校の相談室。けんちゃんがうつむいて、ぽつりと話し出します。
けんちゃん:
ねえ、こころ先生……。
ぼく、なんにもできないんだ。
まわりのみんなはすごいのに、ぼくだけ、なんだかダメな気がするの。
こころ先生:
けんちゃん、来てくれてありがとう。
そう思っちゃうときって、すごくつらいよね。
でもね、その気持ちを正直に話してくれて、とってもえらいよ。
けんちゃん:
ううん……でも、ほんとに自信がなくて……。
テストもよくないし、運動もにがてだし、友だちにもうまく話しかけられないし。
こころ先生:
うんうん。じゃあ、今日はいっしょに「自分に自信がもてないとき、どうしたらいいか」を考えてみようか。
けんちゃんだけじゃなくて、たくさんの子が同じことで悩んでいるんだよ。
■「どうせぼくなんて…」心の中の声

けんちゃん:
なんか、頭の中で「また失敗するよ」とか「やってもムダかも」って声がするんだ。
こころ先生:
その声、わたしも知ってるよ。
じつはそれ、自分をまもろうとしてる声なんだよ。失敗してキズつかないように、心ががんばってくれてるいるんだよ。
けんちゃん:
え? 守ってるの?
こころ先生:
そう。でもね、その声が強くなりすぎると、「やってみようかな」って気持ちまで小さくなっちゃうんだ。
だから今日は、「心の声にちょっとありがとう」って言って、かわりにやさしい声を育ててみよう。
■どうして自信がなくなるんだろう?

けんちゃん:
でも、なんでこんなに自信がなくなっちゃったんだろう……。
こころ先生:
それはね、いくつか理由があるんだよ。たとえば——
- まちがえるとすぐに怒られちゃう
- いつも誰かとくらべられちゃう
- がんばってるのに気づいてもらえない
そんなことが続くと、「ぼくなんて…」って思っちゃうことがあるんだ。
けんちゃん:
たしかに…あるかも。くらべられるの、にがてだな。
こころ先生:
うんうん。でも大丈夫。自信って「生まれつきあるもの」じゃなくて、「あとから育てるもの」なんだよ。
■安心できると、心の中にタネがまかれる

けんちゃん:
育てる? 自信を?
こころ先生:
そう。安心できるときね、人は「やってみよう」って思えるようになるんだよ。
たとえば——
- おうちの人が「だいじょうぶだよ」って言ってくれたとき
- 先生が「がんばったね」ってほめてくれたとき
- 友だちが「いっしょにやろう」って声をかけてくれたとき
こんなふうに安心すると、心の中に「自信のタネ」がまかれるんだよ。
けんちゃん:
じゃあ、ぼくにもタネがあるのかな?
こころ先生:
もちろん!そしてそのタネは、けんちゃんの中でちゃんと芽を出そうとしてるよ。
■「できなかったけど、やってみた」がすごい!
けんちゃん:
でも…ぼく、うまくいったことなんて、ひとつもないよ。
こころ先生:
そう思うかもしれないけどね、「できた!」ってことだけじゃなくて、「やってみた!」っていうこともものすごくすごいことなんだよ。
たとえば——
- 大きな声で発表できなくても、手をあげたこと
- 全部まちがえたけど、最後まで問題をといたこと
- あきらめずに何回もチャレンジしたこと
これって、みんな“できた”に入るんだよ。
けんちゃん:
そっか……それなら、ちょっとだけ“できた”ことあるかも。
こころ先生:
その気づきが、まさに“自信のはじまり”だよ!
■自信を育てる魔法のことば

けんちゃん:
でも、失敗したらやっぱりこわいよ。
こころ先生:
うん、その気持ちも大切。
でもね、そんなときに助けてくれる“魔法のことば”があるんだ。
- 「がんばったね」
- 「ここまでやったのすごいよ」
- 「ちょっとでもチャレンジした自分、えらい!」
そしてね、これをまわりの人からもらうだけじゃなくて、自分で自分に言ってあげることもできるよ。
けんちゃん:
自分で自分に? なんかヘンなかんじ(笑)
こころ先生:
最初はそう感じるかもしれないね。でも「今日のぼく、よくがんばった」って言ってみてごらん?
心の中が、すこしずつあたたかくなってくるよ。
■おわりに:君は君のペースでいい
こころ先生:
けんちゃん、今日のお話をきいてどうだった?
けんちゃん:
うん……ちょっとだけ、気持ちがかるくなった。
ぼくにも“できること”があったんだなって。
こころ先生:
それはすばらしい気づきだよ。
自信は、すこしずつ、すこしずつ育っていくんだ。
比べなくていい。まわりのペースじゃなくて、「君のペース」で大丈夫。
けんちゃん:
ありがとう、こころ先生。
なんか、明日はちょっとだけ、がんばってみたくなったよ。
こころ先生:
うん、けんちゃんのその一歩が、自信のタネに光をあててくれるんだよ。
またいつでも、ここに話しに来てね。
🌱もっと知りたい!子どもの自信を育てる魔法のことば

①「やってみようと思ったことが、すごいよ」
魔法の理由:
→ 結果ではなく、「やろうとした気持ち」に価値があることを伝えます。
子どもは「失敗したらどうしよう」と考えすぎて動けなくなることがあります。
この言葉は、「チャレンジする勇気」をほめることで、心のブレーキをゆるめてくれます。
②「きみの○○、すてきだね!」
(例:きみの描いた絵/考え方/やさしいところ)
魔法の理由:
→ 子ども自身の中にある“強み”に気づかせてくれます。
具体的にほめられることで、「ぼくってこんなところがいいんだ」と思え、自分の良さを信じる土台になります。
③「うまくいかなくても、がっかりしないで」
魔法の理由:
→ 失敗しても受け入れてもらえるという“安心感”を生みます。
安心があるからこそ、再挑戦する気持ちがわいてくるのです。
何度でもやり直していいんだ、と思えることが、折れない心を育てます。
④「まだできないだけだよ。これからできるようになるよ」
魔法の理由:
→ 成長には“時間”が必要だという考えを教えてくれます。
今はできなくても、未来には変われるという希望を持たせる言葉です。
「今」と「これから」を分けて考える視点は、自信をあきらめない力になります。
⑤「いっしょに考えようか」
魔法の理由:
→ 子どもが「ひとりじゃない」と感じられる言葉です。
「考え方がまちがってる」ではなく、「いっしょに考えよう」と寄り添う姿勢は、子どもの安心感と自己表現の力を引き出します。
信頼されている実感は、自信の根っこになります。
✨まとめ
魔法のことばは、子どもを無理に変えようとする言葉ではなく、
「ありのままの自分」を認め、「これからの自分」に期待を持てるように導く力を持っています。
大人が日常で使う何気ないひとことが、子どもの心に大きなあかりをともします。